2017年6月23日金曜日

日刊動労千葉 第8300号

エルダー提案は分社化・転籍への布石(下)
新たな裏切りに手を染める東労組

3 新たな裏切りに手を染める東労組

●なぜ今「シニア協定」?

 「エルダー社員の会社における業務範囲拡大」提案をめぐっては、さらに重大なことが起きている。東労組・革マルが、17年前、鉄道業務外注化で大裏切りを行ったときと全く同じ構図で登場していることだ。
 東労組は、今回の提案に対し、「『シニア雇用協定』と『今後の雇用の基本に関する覚書』の主旨は今も変わらないことを確認した」ということを最大の成果として打ち出している。
 「シニア協定」「覚書」とは、2000年に締結されたもので、17年も前の協定だ。しかも「シニア制度」自体とっくのとうに廃止されており、当然シニア協定も消滅している。何故かそれを今持ち出してきたのだ。
 普通に考えたら全く理解できないことだ。今回の提案についての東労組の情報には「シニア協定」「覚書」を再確認したことばかりが繰り返し書いてあり、当時の経緯を知らない者には何を言いたいのか理解できないはずだ。
 だが、今回の東労組のこの対応のなかにこそ、会社提案の隠された本質が示されていると考えなければならない。

http://doro-chiba.org/nikkan_tag/8300/

●「シニア制度」とは何だったか

 「シニア制度」とは、年金支給年齢の引き上げに伴う60歳以降の「再雇用機会提供制度」であった。提案されたのは1999年。それは一見業務外注化とは何の関係もないもののように装われていた。実際、提案には外注化の「外」の字も書かれてはいなかった。しかし実際は、検修構内・駅・保線・電力・信通業務の全面的外注化と完全に表裏一体のものとして画策された攻撃だったのだ。
 東労組の幹部たちはもちろんそれを知っていた。知っていたというよりも、外注化が前提の制度であることを最後まで隠して進めることを会社と一体で計画した首謀者であった。
 核心部分が隠されていたため、数ヵ月に及ぶ団体交渉は全く意味のないものになった。動労千葉は、シニア制度が業務外注化と何らかの関係をもって提案されているのではないかという疑問をもって、その点についても申し入れたが、JR東日本は「直接リンクするものではない」としらをきり続けた。
 ところが、実際は「直接リンクしない」どころの話ではない。「再雇用」の前提条件が外注化推進協定を結ぶことだったのだ。最終的に東労組が妥結した時点で初めて明らかにされたのは、「労使は業務委託を深度化し着実に推進する」という条項(外注化推進条項)を含む「シニア協定」を締結した組合に所属する者だけが、60歳以降再雇用されるということであった。その結果何が起きたのかは誰もが知っているとおりだ。施設関係、駅、仕業構内、検査派出などの業務が次々に外注化され、何千人ものJR労働者が強制出向に駆り立てられたのだ。

●東労組の外注化裏切り

 それを東労組は、「他企業と比べてぬきんでた素晴らしい制度」「再雇用されるのは東労組の組合員だけだ」「覚書によって、国鉄改革を中核として担った意欲ある真面目なシニア社員だけが再雇用されることを確認した」などと称して大宣伝を繰り広げた。
 それは卑劣極まりないやり方だった。年金が出るまでの再雇用という、一人ひとりの労働者にとって何よりも切実な問題を逆手にとって労働者を外注化・強制出向に駆り立てていくというやり方。それだけでなく、それを他労組の切り崩しにまで使うやり方。どこからこんな悪巧みが生まれてくるのかと思うほどの卑劣さだ。
 しかも会社と東労組は、最終的な修正提案を全組合に一斉に行ったかのように見せ掛けて、実はその何日も前に両者の間で合意していた。東労組が事前に情報を作成して各地方に発送し、提案の日には一斉に他労組攻撃を開始できるように仕組んだのである。異様な癒着体制だ。
 それは実際に功を奏して、国労なども「再雇用」に飛び付くために外注化を認めていくことになる。再雇用を拒否されるという苦しい現実に立ち向かいながら外注化に反対して闘い続けることができたのは、動労千葉―動労総連合だけであった。

●「シニア協定再確認」の意味

 これが「シニア協定」とその「覚書」の本質であった。だが、今回のエルダー提案をめぐって、また再び全く同じことが起きているのだ。
 6月9日、本社で提案を受けて帰ってきたら、すでに東労組の「業務部速報」が職場に張り出されている。会社と東労組の間では少なくとも何日も前に話ができていたということだ。
 しかも、冒頭にも触れたように、「業務部速報」には、今回の提案にあたって、「『シニア協定』とその『覚書』の主旨は今も変わらないことを確認した」ということが書かれていたのである。それがどれほど重大な意味をもつのかは、「シニア協定」の経緯と内容を見れば分かるはずだ。
 「シニア協定」「覚書」の核心は、「労使は業務委託を深度化し着実に推進する」ことを確認したことにある。東労組は、現時点でわざわざそれを再確認したのだ。つまり今的に言えば、「労使は『水平分業』を深度化し着実に推進する」ということを約束したということだ。
 「水平分業」とは《分社化・転籍》、すなわち、業務外注化をこれまでとは全く違う次元まで拡大するということである。「強制出向」というレベルではなく、「転籍」を強制するところまで外注化を拡大するということだ。

●透けて見えてくるもの


 実際、東労組は、『業務部速報/№118』のなかで、「65歳定年延長に向けた大きな一歩です」と歯の浮いたようなことを書きながら、「とはいえ、様々な施策が行われている中で、昭和採用者が65歳を迎える7年後以降どのような体制を構築するのかなど、内容の議論を深めていかなければなりません」と書いている。
 よく読んでほしい。「様々な施策」とは「水平分業」のことだ。国鉄採用者が抜けた後のことは何も明らかにされていない。「議論を深めていかなければならない」と言うが、そこに「7年後以降」などという妙に具体的な数字が出てくる。会社と東労組の間の議論が抽象論だけで終わっているはずがないと考えれば、「7年」という数字は、この間に全業務の分社化・転籍を強行することが確認されているとも読める。

●大裏切りが進行している!

 最後に、この間、東労組・革マルと会社がどれほど対立し、衝突していたのかを考えてほしい。会社は明らかに労務政策を転換し、東労組・革マルを使い捨てる構えでいた。一方、東労組側は、スト権投票だとか、36協定問題など、あの手この手を使って「使い捨てないでくれ」と必死に会社に泣きついていた。
 こうした経緯をふまえて今回の問題を見ると、その意味がより鮮明に見えてくる。
 つまり、東労組・革マルは「水平分業」=分社化・転籍攻撃への全面協力を誓うことによって癒着体制を必死で修復しようとしているのではないか? そのために持ち出されたのが「シニア協定の再確認」だったのではないのかということだ。「あの時は労使一体で外注化までやったじゃないか」「東労組が協力しなければ外注化はできなかったはずだ」。こう言って自らの存在を会社に売り込んでいるのではないか。
 今回のエルダー提案の背後で、東労組の大裏切りが進んでいることは間違いない。それはJRやグループ会社で働くすべての労働者の雇用や権利を破壊し、売り渡す裏切りだ。絶対に許すことはできない。
 「水平分業」を阻止するために、そして定年延長と65歳まで働き続けることのできる職場と労働条件の確立をめざして共に闘おう。6・25定期委員会の成功をステップに、全力で反撃にたちあがろう。

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